コストなしで・・・社員を転職させない取組




 若年人口の減少、労働者の需給バランスが崩れたことで、大手は軒並み賃金を上昇させています。ユニクロでは初任給が「33万円」、サイバーエージェントでは初任給が「42万円」と、人材獲得競争が激しさを増しています。

出生数は、昭和48年の211万人をピークとして、令和6年は72万人まで減少。その割合は34.1%と、ピーク時の1/3に迫っています。

出生数がピークの学年に生まれ、バブル崩壊後、山一證券や北海道拓殖銀行が倒産した年、人が余り、不景気で就職氷河期の時期に就職した私にとって、言葉を失うような採用状況となっています。


 恐らく、中小企業でも、まだ何とか採用できる状況だとは思いますが、不景気にならない限りは年を経るごとに採用が困難となり、更には追い打ちをかけるように、社員がより条件が良い会社に転職していく現実が迫っています。

「労働基準法を守らない会社は生き残れない」という話も聞こえてきます。

 そのような中、社風や処遇を改善して、社員が働き続けたいと思う組織へ向けた経営努力が必要となります。
貢献した社員に報いる人事評価制度の構築、コミュニケーションの活性化、労働時間の削減、処遇の向上等、さまざまな対応が考えられますが、何から取り組んで良いか、きっかけがつかめない方も居るかと思います。


 すぐに変えられる効果的な取組として、処遇の改善があげられますが、その為には原資が必要です。原資は利益ありきであり、直ぐに取り組めるとは限りません。

そこで考えられる最初の取り組みは、「年次有給休暇の計画的付与」です。
2019年4月に労働基準法が改正され、有給休暇の年5日取得が義務付けられましたが、中小企業の建設業では、現在でも守れていないところがほとんどではないでしょうか?

したがって、法令遵守という観点でも、まずはここから解決していきましょう。

例えば、年間所定労働日数が105日の会社であれば、有給休暇5日を計画的にカレンダーに埋め込むことで、休める日が110日(105日+5日)のカレンダーが出来上がります。これまでと休日は変わらず、見かけ上の休める日が5日増えます。

建設業の現場社員は、有給休暇はおろか、休日出勤の代休取得もままならない社員が多いと思いますので、会社が有給休暇を指定することで、社員は有給が取得しやすくなり、満足感が高まりますし、有給休暇取得義務の法令を遵守することができます。

 労働力人口が減少し、採用できない、社員が転職してしまう状況は、確実に迫っています。まずは、取り組み始める、一歩を踏み出すことが大切です。そのきっかけとして、有給休暇取得が難しい建設会社では、「年次有給休暇の計画的付与」に取組むことを、お勧めいたします。