技術者1人で経営事項審査を通そうとする専門家

専門家だからと言って、正しいことを言っているか分かりません。もしかしたら表面的な知識だけで専門家を名乗っている人が居るかもしれません。
初めて経営事項審査を受けようとする、ある建設業のお客様から、とある行政書士に、「技術者1人で経営事項審査を申請する」と言われたということで、私に相談がありました。
建設業は、最低2人の技術者が居なければ、工事を受注することができません。
大前提として、専任技術者という会社に常駐する技術者が必要です。加えて、主任技術者という、工事を施工管理する技術者が必要です。つまり、工事を受注するためには、最低2人の技術者が必要となります。にもかかわらず、とある行政書士は「技術者1人で経営事項審査を申請する」と言うのです。技術者2人以上いなければ工事を受注できないことは、建設業事務の方は比較的分かっているのですが、とある行政書士にとっては非常識なことなのかもしれません。
私は全力で阻止してくださいとお客様に伝えました。経営事項審査には工事経歴書と言って、請負った工事とともに、その工事に携わった主任技術者名を記載します。したがって、技術者が1人(専任技術者のみ)しかいない会社は、工事を受注できず、間違って受注してしまった場合は、建設業法違反となります。法令順守している会社であれば、工事経歴書は存在しないはずです。
もし技術者1人で経営事項審査を申請してしまった場合、経営事項審査の本審査時に、建設業法違反を指摘される可能性があります。仮にそこを通り抜けて申請できてしまった場合であっても、技術者が1人の経営事項審査を発注者に見せることはできません。見せてしまえば、主任技術者が居ない=工事を施工できないことが明らかとなり、発注者側は、建設業法違反状態であることを黙認して発注するか、厳しい会社であれば発注してもらえなくなります。
お客様が上記事情から技術者1人での申請は困る、とある行政書士に伝えたものの、「技術者1人でも経営事項審査は申請できる」と譲らなかったそうですが、なんとか私の描いたシナリオ通りに技術者2人で申請してもらえることになりました。
どのようなシナリオかと言うと・・・
主任技術者となるためには、実務経験10年以上の証明が必要ですが、B社員が以前勤務していた会社からの証明をもらえれば、今の会社との合算で10年以上の実務経験が証明できるため、主任技術者になることができます。その書類の準備や証明方法をお客様にお伝えし、お客様がとある行政書士に伝え、なんとか技術者2人で経営事項審査を申請してもらえることになりました。
この会社は民間工事しか受注しませんが、グレー状態で工事を請負っているにも関わらず、社長の軽い思い付きで経営事項審査を受けることになりました。経営事項審査を受ける必要が無いにも関わらず、経営事項審査を受けた結果、建設業法違反がばれて工事が受注できなくなるのでは本末転倒です。
本来行政書士側がそのことに気付くべきでしたが、とある行政書士は知識なく経営事項審査業務を請負ってしまっている様子で、専門家の恐ろしい現実を目の当たりにする出来事でした。