「怪しい就業規則を簡単に見極める方法」怪しい就業規則は会社に災いをもたらします

 

 就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場に作成義務があります。
就業規則は、会社の憲法、法律とも言えるもので、訴訟の際は、就業規則がその判断の根拠となります。


例えば、トラブルを起こした社員を懲戒しようとする場合、そのトラブルが懲戒理由として就業規則に規定されていない場合は、社員を懲戒する(罰する)ことができません。
また、社員に周知をすることで、初めて効力を発揮します。したがって、周知をしていないと、懲戒事由が規定されていても、社員を懲戒することができません。


訴訟となった場合、就業規則に規定されていないことで懲戒したり、規定がされていても、社員に周知をしていない場合は、その懲戒は無効であり、会社は裁判に負けてしまいます。


したがって、ただ就業規則を作るだけでなく、会社の実情にあった規定を作り、周知する必要があります。


 では、本題に移ります。
「怪しい就業規則を簡単に見極める方法」です。
ポイントは2つあります。


ポイント1
入社時の提出書類の規定に、実際には徴求していない書類名がある。

例えば、


(採用決定者の提出書類)
第8条 社員として採用された者は、採用日から2週間以内の会社が指定する日までに、次の書類を提出しなければならない。
①住民票記載事項証明書
②社員及びその扶養家族の個人番号を通知する書面
③身元保証書
・・・

①住民票記載事項証明書ってなに?見たこともないんですけど・・・というケースです。

これを確認することで、会社の実態を把握・確認せず、ひな形をコピペしたただけの就業規則であることが推測されます。


ポイント2
誤字脱字が多い、参照する条文が間違っている


例えば、
・句読点があったりなかったりしている
・漢字の間違え 規程、規定(条文のまとまりは規程、各条文は規定)
・漢字表記とひらがな表記が混在している、統一されていない
(及び および・又は または・者 もの)

参照する条文間違えとしては、

(介護休業)
第16条 ・・・就業規則第21条に規定する年次有給休暇とは別に・・・

本当は21条ではなく、23条

というケースです、このことで、作成者の事務リテラシーのレベル、就業規則は重要なものであるにも関わらず、雑に作られていることが推測されます。


 社会保険労務士が就業規則を作っている場合もあると思いますが、それだけでは安心できません。
なぜならば、社会保険労務士個々のレベルには、雲泥の差があるからです。


社会保険労務士は、試験に合格し、2年以上の実務経験か一定の講習を受けることで、社会保険労務士を名乗り業務を請けおうことができます。
記憶力が高ければ、試験に合格することができますが、記憶力と実務力は比例しません。


また、社会人経験がないまま社会保険労務士となることができるため、事務リテラシーが不十分であったり、仕事に対する責任感が不十分であったり・・・ということが、当然起こり得ます。
これは、税理士等他の士業にもあてはまります。


 一応弁解しておきますが、私の周りの社会保険労務士は、皆優れています。大手企業の人事課長だったり、財閥系企業の役員だったり、大学の講師をしていたり、内閣府で企業主導型保育事業の労務監査の仕組み作りに携わっていたり、・・・などです。
定年退職後に開業した人は更に凄く、東大出身の元キャリア官僚や阪大出身のメガバンク元役員などが普通に部会(各分野の学習会)に参加し、社労士仲間として飲み会等で交流しています。

一方では、過去に社会保険労務士がした仕事ぶり、例えば、顔も名前も知らない社会保険労務士が作成した就業規則や規程を確認すると不備が多く、同じ社会保険労務士としてとても残念な気持ちになります。


大手企業を経験して社会保険労務士になる人もいれば、そうでない社会保険労務士もいる、つまり、社会保険労務士個々の能力には、雲泥の差があるということです。


私は、社会保険労務士の更なる地位向上を願っており、マイナスとなるような発言は避けたい立場ですが、これが現実であり、皆さんの事業運営にも関係することなので、あえてお伝えさせていただきました。


 話が長くなりましたが、怪しい就業規則は会社に災いをもたらします。
以前、退職金を340万円過払いしてしまったケースをご紹介しましたが、これも、退職金規程に不備があったことで起こりました。


怪しい就業規則を見極めるポイントを確認していただき、該当する場合は、就業規則専門の社会保険労務士にチェックしてもらうことをお勧めします。


 就業規則の無料診断を行っている社会保険労務士事務所は数多くあります。
当事務所でも、就業規則の無料診断を行っています。
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